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サンフランシスコ 話すより伝える苦労

2012年02月07日

 サンフランシスコのある大学の日本語科で話をする機会があった。日本の新聞を読むことに特化した少人数のクラスで、大学生と大学院生の合計8人が学ぶ。たまには業界の人を呼ぼうという話が持ち上がったのだ。指導するのは、博士号を持つ日本人女性の教授。こちらは英語で説明する気構えでいたが、授業はすべて日本語でしているという。

 学生の前に立つと、「経歴の紹介から話し始めてください」と向けられたので逆に聞いてみた。「どの程度の日本語を使えば、皆さんに理解してもらえるのでしょうか」。すると、「その程度の日本語でしたら、みんな理解できます」。ハッとするやら、英語を使わなくてもいいのでホッとするやら。

 どこの新聞社でも1年生記者に教えるような記事の組み立て方を説明したあと、質疑応答に。東日本大震災以降の原発問題を読み込んでいるらしく、日本の新聞報道は体制寄りかという意味の質問が数回繰り返された。学生は、放射能関係の詳細が市民に十分伝わっていないという話を米国の新聞で読んだと言い、大戦前の日本の報道機関は国策に加担していたと指摘する。

 今はそのようなことはなく、新聞社が知るところはそのまま紙面化されると強調しておいた。日本語でしゃべっても難しい授業だった。(岡田幹夫)