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台中 総統選進んだ「民主」

2012年02月13日

 広大な駐車場は3万を超える人で埋め尽くされた。台湾総統選の終盤、台中市で開かれた民進党の応援集会。会場には腸詰めやイカ焼き、独特の臭気のある臭豆腐などの屋台が並び、一見すると縁日のような雰囲気だ。

 だが、候補者である蔡英文主席の名が書かれたピンクの小旗を手にした支持者は、党幹部や学者らの演説に熱い視線を注ぐ。フォーク歌手の歌声に合わせて合唱する場面もあり、硬軟ありのエンターテインメントだ。

 主役の蔡主席が登場すると会場の興奮はピークに達した。小旗を振って「当選」「当選」と連呼。支持者の集まりとはいえ、政治家がこんなに人気とは日本では考えられない。

 台湾の人たちは選挙で国のリーダーたちを選ぶことを「民主」だと言い、誇りを持つ。かつて日本の統治や国民党の独裁で抑圧された歴史を持つだけに、自分たちで選ぶ意義を強く意識している。

 投票率は過去最低でも74.38%の高率。国民党の馬英九総統に敗れた蔡主席は、馬総統をたたえ「責任は私にある」と潔く語り、有権者に感銘を与えた。

 8年前の総統選で民進党候補が銃撃されたり、敗れた国民党候補が開票に抗議して座り込みを続けたりしたことを思えば、台湾の民主はさらに進歩したようだ。 (渡部圭)