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カイロ 志士は国境を越えて

2012年02月17日

 「物心ついたころから、大統領といえばムバラクだけ。政権が崩壊するなんて、前日まで思ってなかった」

 エジプトの民衆革命を導いた、民主化デモから1年。仕掛けた若者グループのリーダーで、弁護士のジアド・アイレーミさん(31)が、カイロで緊迫した当時を振り返った。

 チュニジアの「ジャスミン革命」に触発されたデモ、などといわれる。だが、何も自然に発生したわけではない。実は2カ月前から当局の目を盗み準備を進めていたという。

 それでも、逮捕や処刑を覚悟していた。自身は4回の逮捕歴がある。仲間には、当局に脅迫を受けた際の心構えを書いた本を手渡した。実際、弾圧で多くの友人を亡くした。

 歴史を動かしたのは、民主化への情熱と向こう見ずな行動力だった。夢にも思わなかったが、初の自由選挙で国会議員になった。

 だが、デモが目指した社会正義の実現などはまだ見えない。命をささげた仲間に代わり、取り組むつもりだ。

 民主化運動を引っ張るリーダーたちは、20~30代が目立つ。そういえば、日本の明治維新で、薩摩藩の西郷隆盛や大久保利通が倒幕を前に奔走したのも30代だった。

 日本の政治は「維新」ブームのようだが、カイロの若者たちと話していると、本物の幕末の志士たちと重なって映る。(今村実)