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マイアミ 英語通じぬアメリカ

2012年02月16日

 英語の通じない「アメリカ」がある。米大統領選の共和党候補レース第4戦が行われたフロリダ州で、マイアミ市内にあるキューバ移民街「リトル・ハバナ」を訪ねた。目的はオバマ大統領や共和党の移民政策に対する声を聞くことだった。

 青果店主の男性(71)に英語で質問すると、困った表情をした。政治難民としてキューバから移住して50年。米国籍も取得したが、スペイン語しか話さない。店に来ていた英語を話す別のキューバ移民男性を介し、何とか会話が成り立った。

 そこから先は誰に話し掛けても「英語は分からない」。飲食店を営むキューバ移民男性(68)は、英語を話せる近所の小学生男子を通訳に呼んでくれた。こちらの下手な英語を小学生がスペイン語に訳し、男性の話を英語で説明してくれる。さすがに取材にならない。

 1959年のキューバ革命後、米国は多くの移民を受け入れてきた。キューバ移民は、祖国から目と鼻の先のマイアミに母国語で生きていける地域を築いた。そのたくましさと米国の懐の深さを目の当たりにした。

 米国は中南米系移民の流入で今も人口が増えている。移民が経済を下支えする一方、不法移民は社会問題になっている。人口減少とともに、経済力も低下を始めた日本の行く末を思わずにはいられなかった。(竹内洋一)