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カイロ 春来りなば…大激論

2012年03月07日

 「軍はすぐ政治から手を引くべきだ」

 「いや、まだ早い! 混乱するだけだ」

 乗り合わせたカイロの地下鉄で、見ず知らずの若者と年配者が、大声で激論を始めた。お互いに持論を譲らず、取っ組み合いになりそうなけんまくだ。

 エジプトの民衆革命から1年。暫定統治をする軍は、直ちに民政移管すべきか、6月の大統領選を待つべきか。若者は民主化を急ぎ、年配の男性はまず安定を求めるようだ。

 周りに人だかりができ、「軍はダメだ、軍はダメだ」と、若者を応援するシュプレヒコールを叫び始めた。うち1人が「俺は軍とイスラム政党は信用できん」と声を上げた。

 今度は、イスラム政党を支持する乗客らが、「ノー、ノー」と怒って主張し始めた。そこで、電車が駅に停車し、大勢を巻き込んだ騒ぎは収まった。

 政情の混乱が続くカイロは今、2人寄れば、政治談議が始まる。独裁政権の打倒で団結した国民は、民主化の考え方や宗教観、世代などで分断が進む。

 旧ムバラク政権時代、庶民が公の場で政治の話をするのは、まれだったという。監視が怖く、何を言っても無駄だったからだ。

 かんかんがくがくの議論は、民主主義が歩み始めた証しだ。さまざまな意見を集約する仕組みづくりは、困難を伴うが、やり遂げてほしい。 (今村実)