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モスクワ 誰のためのGPS?

2012年03月21日

 最近、新しい携帯電話を買った。GPS(衛星利用測位システム)機能付き。自分のいる場所が地図に表示される。慣れない街を歩いていると、どこにいるのか分からなくなることも。居場所の確認に何かと重宝する。

 ところで、モスクワ市地下鉄は近く、この機能や携帯電話の発信電波を利用した新システムを取り入れることになった。市交通部によると、携帯電話会社との協力で、駅構内やプラットホーム上の人の流れや人数を把握できるようにする。ラッシュ時や客数の少ない時の列車到着時間の間隔調整などに役立てるそうだ。

 地上の出入り口につながるエスカレーターの稼働数にも利用。客数の大小に合わせ、動かしたり止めたり。電気代の節約になるし、エスカレーター自体の延命も図ることができる、というわけだ。

 地下のエスカレーター発着場所にはたいてい、管理人のボックスがあり、客の昇降を始終チェックしている。乗換駅への道順を聞いたりすると、「話し掛けるなって表示が見えないの!」と怒られるのが常だが、そんな管理人も将来いなくなるかもしれない。

 便利な携帯電話だが、ここはさまざまな意味で治安機関の強いお国柄。勝手な想像だといいが自分の居場所も簡単に監視できるのかと思うと少し気持ちが悪い。 (原誠司)