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ソウル 都会を潤す政策論争

2012年03月26日

 支局の近くに、ソウル中心部の観光名所、清渓川(チョンゲチョン)がある。地下水路になっていたのを、ソウル市が2003年から復元工事を始め、05年に人工河川としてよみがえった。

 全長約6キロメートルの遊歩道もある。都会の水辺は貴重だ。記者も取材への行き来でよく遠回りして、川の水音を楽しんでいる。

 この「再開発の優等生」に再び手を入れる構想を、先日ソウル市が打ち出した。地下水路に戻す、のではない。歴史遺産と生態系の復元に向けて検討機関を設けるのだという。

 朴元淳(パクウォンスン)市長は川沿いで開いた会見で、03年からの復元を評価しながらも、歴史的遺構が保存されなかったことを残念がった。

 川の復元は李明博(イミョンバク)大統領が市長時代に行い、後の大統領選勝利の要因とされる。

 一方、現市長は野党所属。4月の総選挙や12月の大統領選を控え、「再復元」は政治的決定だとの見方もある。予算面や地元の意向もあるから、議論に時間がかかるだろう。

 それでも朝鮮時代のように石橋が架けられ、その上から水面を跳ねる魚や、飛び交うホタルを眺めるなんて、考えただけでわくわくする。市民の楽しみが増す、夢のある政策論争なら大歓迎だ。ただ実現すると、記者が遠回りばかりして同僚が怒るかもしれないけれど。 (篠ケ瀬祐司)