2012年04月23日
米ルイジアナ州ニューオーリンズに「ハリケーン」という名前のカクテルがある。ラム酒をベースにフルーツジュースやシロップを混ぜた、ピンク色の甘いカクテルだ。
米国では路上での飲酒が禁止されているが、この街の「バーボン・ストリート」は例外。割れる心配がないプラスチックのコップ入りならば、どの店からも持ち出しできる。観光客や地元の若者はこいつを片手に通りを歩き、バーから流れるジャズやブルースに足を止めている。
ニューオーリンズは2005年8月のハリケーン「カトリーナ」で被災した。それでもカクテルのハリケーンは消えず、復興作業員が仕事後に一杯やって、疲れを癒やしていたという。でも、堂々と注文するのも気が引けて「ハリケ…」と口ごもったら、オランダのビール「ハイネケン」が間違って出てきた。
日本は東日本大震災から1年が過ぎた。国全体が「自粛」や「我慢」の長い日々を過ごしてきたが、歌手の桑田佳祐さんがヒット曲「TSUNAMI」について、ラジオでこう話したと聞いた。
「いつか悲しみの記憶が薄れ…復興の象徴として歌える日が来たらいい」
名物カクテルとヒット曲。心が折れてしまいそうな夜、酒や歌は人をそっと包み、立ち上がる勇気を与えてくれる。 (青柳知敏)