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モスクワ 春風に友と交わす杯

2012年05月02日

 4月初旬なのに、雪が舞い、氷点下の日が続いて、モスクワにはなかなか春が来ない。いつまでも2月の寒さのままなので、さすがにモスクワっ子の間でも、最近は「今日は2月56日」などというアネクドート(小話)が飛び交うほどだ。

 ロシアに花見の習慣はないが、暖かくなると、街角や公園では、若い男女が群がってビールやウオツカの瓶を空けながら談笑する姿が目立ってくる。

 若者が目立つのには理由がある。モスクワ大学生の友人いわく「店で飲むビールは高すぎるから」だ。1杯500ミリリットルで100数10ルーブル(300円以上)は下らない。学生食堂ならば、腹を満たす夕食に十分な額でもある。

 そんな学生の間でいま話題なのは「エコパブ」だそうだ。エコノミーパブの略で、日本語では「節約酒場」とでも訳されるだろうか。近く数店舗がモスクワに開店することが、新聞や雑誌に載っている。1杯40ルーブル台の値は、露店で缶ビールを買うほどの安さだ。

 しかし、春にはやはり、屋外で仲間と飲みたくなる。長い夜と氷雪から解放された喜びが、ロシア人でなくてもそうさせる。ただ、酔った勢いでけんかや取っ組み合いも頻発する。巻き込まれないよう、旅行会社や大使館が「若者集団には近づくな」と危険情報を流す季節が、また近づいている。 (原誠司)