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コペンハーゲン 大胆な国に助けられ

2012年05月09日

 なかなかに大胆かつ大ざっぱな国だ。そんな感想をデンマークのコペンハーゲンで抱いた。

 3月末から今月初めまで欧州連合(EU)の非公式財務相理事会などの取材で訪ねたときのこと。会議場で、取材するための記者証を受け取ろうと、英国海外特派員協会発行の身分証を提示したが実はドキドキだった。

 勘違いで身分証にはさみを入れ、カードは真っ二つ。接着剤で貼り合わせていたからだ。質問された揚げ句、「怪しい」と、記者証をもらえない最悪の事態を心配していた。

 ところが、実際は一つの質問もされず、あっけなく記者証は手元に返された。「オーケー、グッド!」の声まで添えて。ブリュッセルで開かれる公式の財務相理事会会議ではこうはいかない。身分証でも、手触りから慎重に係官が調べる。

 さらに驚いたのは、国際会議ではお決まりの手荷物の赤外線検査もなし。というか、チェック自体がまったくなかった。

 会議後の街で、ガラス張りのブティックの前を通りかかった。休日で入り口は閉まっていたが、マットの上にはキャッシャーの空のレジの引き出しが無造作に投げ出してあった。「押し入っても、お金はないよ」。そんなメッセージだろうが、この国らしい大胆さが小気味よく胸に響いた。(有賀信彦)