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ソウル 揺さぶり動じません

2012年05月18日

 記者「素人ながら調べてみると、まさに韓国の白●島(ペクリョンド)の上空を通過しますが…」

 教授「いや、通らない。外交問題になる」

 記者「でも、地図で発射場と推進体の落下海域の緯度経度を結ぶと通るんですが…」

 北朝鮮のミサイルの飛行ルートをソウルの専門家に事前取材したとき。教授は「通過」を強く否定した後、助手に電話して専門ソフトでルートを計算するよう促した。数分後、助手からの電話に教授の顔色が変わった。

 「上空を通過する。これは深刻だ。爆発すれば下にある島の人々はみな死ぬのだ」

 数日後、ある韓国紙の一面に「島上空通過」と載った。ただ、以降も、通過と落下の危険性を扱うメディアは少なかった。大騒ぎの日本とは違った。

 島の事務所に前もって電話して尋ねてみた。「避難は軍の指示に従うだけ」との答え。発射2分後に上空に達するとの予測を伝えると、「それなら避難は無理だ」。あわてた様子はなかった。

 失敗に終わった発射だが、韓国軍は発射54秒後に捕捉し、韓国メディアも即時報道した。日本は初動対応が混乱し、公表が43分後と遅れた。

 「北の脅威には慣れっこだから」と知人の男性。ある脱北者は「北の揺さぶりが効かない韓国」を評価した。長年の経験の知恵だろうか。 (辻渕智之)

●は令の右に羽