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ロンドン 幸運お気に召すまま

2012年07月03日

 意外な出会いほど、心を躍らすものはない。「モスクワで、シェークスピアの演劇をするロシアのいい劇団がないか探したが、見つからなかった。でも代わりに、日本のいい劇団が見つかったんだ」

 ロンドンのグローブ座では、五輪の関連文化行事として、世界32カ国の劇団が4月から7月まで立ち代わり、演劇を披露する。一連の公演を企画した英国人ディレクターは、京都の劇団「地点」を知ったいきさつを話した。

 グローブ座は半屋外劇場。声も通りにくければ、雨も降るし、風も吹く。それだけに、うまいだけではだめで力強さが必要という。

 モスクワでチェーホフの「桜の園」を演じた「地点」に、現地の演劇関係者が感激。ディレクターに「ふさわしい劇団はモスクワには残念ながらない。でも、日本の劇団ならあるよ」と推薦した。

 ディレクターはわざわざ日本まで足を運び、ロシア人の言葉に違(たが)わぬ「観客と一体になることのできる力強さ」を確認。グローブ座での出演を持ち掛けた。

 毎日、劇団の稽古を目にするディレクターに「地点」の稽古の特徴を尋ねると、にやり。「穏やかなことかなぁ。例えば、別の日のある劇団は、怒鳴り声が終始響いていた。本当にすべての劇団が全然違う。それが素晴らしいんだ」 (有賀信彦)