2012年07月10日
米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長が辞意を表明した。
つい3週間ほど前、NRCロビーで会った。あの笑顔と長身を思い出す。
なぜ辞任するのか。本人は言葉を濁しているが、委員長職とは“別の形”で原発の安全性を追求すると示唆した。
昨年末、彼の同僚であるはずの4人の委員が、ヤツコ氏について、委員長としての職務遂行の手法に問題があるとホワイトハウスに告発。辞職させるべきだと批判したという。
ヤツコ氏と他の委員の間には、原発の安全性を厳格に解する基本姿勢に、大きな違いがあった。彼は日本企業の新型原発の建設認可に、ただ1人、反対票を投じた。福島事故の検証を基にしたNRC調査委員会の勧告を、早期に実現するよう熱心に主張したのも、彼だった。
一方、次期委員長と目されるマグウッド氏ら他の委員は、勧告の実現に、もっと時間をかけるよう主張した。そのマグウッド氏とも3週間ほど前に会った。アフリカ系の温厚な人物だが、委員になる前に、日本企業からかなりの額のコンサルタント料をもらっている。米議会は、こうした情報を公開している。
原発の最終認可から数日後、現場に行ってみた。建設は、まるで認可から半年はたったのかと思えるくらいに、もう着々と進んでいた。 (野口修司)