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ブリュッセル 尻ぬぐいはユーロで

2012年07月27日

 思わず立ち止まった。顔を近づけてよく見たが、そのポスターはまぎれもなく何かの排せつ物の写真だった。ブリュッセルの地下鉄シューマン駅。多くの人が行き交うホームの壁に、大便を堂々とあしらったポスターが張ってあった。しかも、50ユーロ紙幣が排せつ物の下に敷かれている。絶大なインパクトだ。

 「イヌのふん50ユーロ」「汚した者が払うこと」。文字を読んで意味が分かった。公衆道徳の乱れ、特に街を汚すことを憂えた市のキャンペーンのようだ。同じ日に利用した別の駅には、道端でびしょびしょになった無残なユーロ紙幣を撮影した“立ち小便バージョン”があった。たばこの火で焦げたユーロ紙幣をモチーフにした“吸い殻のポイ捨てバージョン”もあった。

 花の都パリでも、イメージと現実との差に失望する第一歩は歩道の上にいやというほど落ちているふんやごみだ。隣国ベルギーの首都も、おそらく事情は同じなのだろう。

 シューマン駅は欧州連合(EU)のビル群の最寄り。EU首脳らがユーロ危機対策の会合でたびたび集まる場所だ。一緒に立ち止まった英国人記者が言った。「このポスターは、通貨ユーロが危ないということを言っているのでは」。一瞬、なるほどと思ってしまった。 (野村悦芳)