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北川 眠る人々に復興は…

2012年08月20日

 谷間の集落の道沿いに倒壊した建物と、がれきの山が連なる。中国四川省北川チャン族自治県の曲山鎮は、2008年の地震で壊滅し、ゴーストタウンと化した旧市街地をそのまま保存してある。

 住民の7割近い1万5000人が犠牲になった。生き残った人は別の場所に新造された街に移住。かわりに団体客がそぞろ歩き、観光用カートが走る。地元当局の担当者は「建物の安全性が重要だと教訓をくみとってもらうため」と意義を説く。

 だが行方不明者が依然多く、建物やがれきの下には大勢の人が埋まっている。地震で崩壊した後、新市街地に再建された北川中学に通う女子生徒は「当時小学生だった私は無事だったが、中学校にいた2人のいとこは見つからなかった」。

 この街では日本の警察や消防、海上保安庁の職員らも緊急援助隊員として救出活動にあたった。先日、現場を再訪したある隊員は「4年たっても、重いコンクリートやれんがの下で苦しんでいるのを見るのは、つらかった。1人でも多く出してあげるべきだった」と目を潤ませた。

 復興の遅さが指摘され、今も行方不明者の捜索が続く東日本大震災の被災地とは対照的。だが、「四川の復興はほぼ計画通り3年余で完了した」と胸を張る担当者の言葉を素直に受け止められなかった。 (渡部圭)