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ニューヨーク ピンクのお約束ゆえ

2012年08月22日

 「娘さん、かわいいですね。何歳ですか」

 米ニューヨーク郊外の自宅近くで催された地域の祭りで、肉の串焼きを買おうとバーベキュー屋台の前に並んでいた時のことだった。公園のすべり台の方へと駆けていった息子を見て、前に並んでいた男性が、そう尋ねてきた。

 「息子なんですよ」と軽く訂正すると、男性は「ごめんなさい」と、申し訳なさそうな顔。すると、その横にいた男性の息子が「お父さん、しょうがないよ。あの子、ピンクのシャツ着てたもん」と慰めていた。

 数日後、知人の男性が、ピンクのズボンをはいているのに出くわした。「似合ってるね」と褒めると、ホッとした表情に。友人からは「勇敢なやつだ」と、からかわれていたという。

 なぜならば、一般的に男性はピンクの色の洋服を着ないのが米国男性の流儀だからだという。

 「ニューヨークだから、流行に合わせてピンクに挑戦したけど、田舎では無理だよ」と、米中西部出身のこの知人男性。幼いころに親から与えられた洋服は青色系のものばかりだったとも教えてくれた。

 息子が「娘さんですか?」と言われるたびに、「かわいいから間違われるんだね」と喜んでいた私。単なる親ばかだったのか。

 (長田弘己)