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香港 つかの間の自由求め

2012年09月06日

 「上海の役人は、庶民から土地を無理やり収用し、業者から賄賂を受け取っている」「広東省の役人は、みなうそつきだ」-。

 香港の中国返還から15周年となった1日。式典参加のために香港入りした胡錦濤国家主席の滞在先や行く先々では、不満を直訴しようと中国本土から来た庶民たちが横断幕を掲げた。

 地元政府の腐敗を訴えていた江西省の夫妻は、「中央政府に直訴しようと北京に向かっても、すぐに連れ戻されてしまう。胡主席が香港を訪れるというので、電車とバスを乗り継いできた」と話してくれた。

 中国本土での不満をはき出そうと、言論や集会の自由が根付いている香港を訪れる人が増えている。天安門事件から23年となった6月4日の追悼式典や、返還15年のデモでは、本土からの参加者が例年よりも増えたという。

 一方で、香港警察当局の強硬姿勢も目立ち始めた。胡主席の滞在先近くであった中国の民主化を求めるデモでは、催涙スプレーや放水で鎮圧。香港各紙は「香港警察が“中国化”」と書き立てた。

 江西省の夫妻も、胡主席に近づくことはできなかった。だが、「横断幕を掲げて叫べただけで、少し気が晴れた。本土では、それさえ抑えつけられるから」と、少し笑顔を見せた。 (今村太郎)