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ウランバートル 禁断の味に酔いしれ

2012年09月03日

 禁断の味だった。

 モンゴルで行われた国民大会議(国会)選挙。前回2008年は不正を疑った市民が抗議デモ、暴動に発展し5人が死亡、初の非常事態宣言が出された。

 このため、政府は選挙投開票当日とその翌日、アルコールの販売を禁止した。しかし、各国の酒を味わいたい。韓国料理店なら規制が緩いと思い、ビールを注文したら、あっさり手で×マーク。

 しかし、抜け道はあるもの。ホテルのバーでビールを買い持ち込んで、チヂミをつまみに飲んでいると「だめって言ったでしょ」とウエートレス。渋々「ここでは飲まないから」と机の下に隠した。

 次の日。今度は用意周到に実行した。「われわれは外国人だから暴動は起こさない」と何度も懇願すると難色を示すマネジャーも納得。奥まった個室を用意してもらいビールを注文。警察やほかの客にばれないようにアルミ製のピッチャーにビールを移し替えて運んでもらった。

 モンゴルのビールは、飲み慣れた中国のアルコール度の低いすっきり系のビールと違い、黒褐色でほろ苦いアルト系の芳醇(ほうじゅん)な味わい。

 それにも増して、“禁酒令”の中でこっそり飲む喜び。標高1300メートルを超え少しふわふわする感覚の中、たどり着いた冷えたビールの味は格別だった。 (安藤淳)