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ワシントン 明るいわが家を実感

2012年09月04日

 世界一の経済大国の首都近郊に住み、こんな目に遭うとは思わなかった。先月29日夜、暴風雨に襲われた米東部で300万世帯以上が停電。わが家も丸5日間、電気なしの生活を余儀なくされた。

 連日40度に迫る猛暑。エアコンも冷蔵庫も使えない。停電を免れた近所のスーパーでは氷は売り切れ。ぬるい水を飲み、脱水症状を避ける。コンロが電気式のため、夕食はやけっぱちの炭火バーベキュー。冷凍庫の中で溶け始めた食材を片っ端から焼いた。

 夜はすることもないので、キャンプのテントよろしく家族でろうそくを囲んで話し込んだ。手慰みにギターを取りだし「上を向いて歩こう」を弾く。普段はオヤジの歌声に迷惑そうにしている娘2人も歌に加わった。

 停電の原因は、郊外の住宅街が森の中にあるからだ。電柱の近くにそびえる巨木が嵐や大雪のたびに倒れ、方々の電線を寸断する。地域の送電会社は規模が小さく、復旧作業は遅々として進まない。

 こうして迎えた7月4日は米国の独立記念日。午後は首都中心部の冷房の効いた支局に家族で避難。日が暮れた後は近くの花火大会で夜空の大輪に歓声を上げた。渋滞の首都を抜け、わが家にたどり着くと、無人の窓からかすかに電灯の光が漏れていた。独立記念日を祝う花火よりも明るかった。 (竹内洋一)