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モスクワ ピンハネ身近で実感

2012年09月13日

 「国家予算は、使われる所まで届かなければならない」。ロシアのメドベージェフ首相は、折に触れてそう言う。ロシアでは、事業資金が実際の現場に届く前に消えて無くなることが多いらしい。

 こんなことを身近で感じる出来事があった。自宅トイレで今年3月、水道管が破裂。廊下や居間などが水浸しになった。フローリングの床約50平方メートル分が波打ち、張り替えることになった。

 工事は、家主でもある外務省の外郭団体が業者に委託して無償で5月末から始まったが、1カ月以上たつのに終わらない。作業に来たり来なかったりと気まぐれな業者に不満を告げると、「床材が注文どおり届かない」「ラッカーが途中で無くなった」と言い、早くしたいならこちらで用意しろと暗に求める。

 不審に思って家主らに事情を聴くと、業者はわざと資材購入を遅らせ、しびれを切らしたこちら側が買いそろえるのを待っていたらしい。そうすれば、家主が出した資材分のお金は業者のポケットマネーになる-という算段だったようだ。

 メドベージェフ氏は今年3月、自らが主導する「開かれた政府」の会合で、予算の抜き取りなどの経済犯罪が「もはや犯罪といえない状態」と逆説的に語った。確かに常態化しているのかもしれないと、身近な出来事で体感した。

(原誠司)