2012年09月28日
ある晩、北京で乗ったタクシーの料金が14元(約170円)だったので、運転手に20元札を渡すと、「ちぎれた札はだめ」と突っ返された。
財布に後は10元札と100元札しかない。100元札を渡すと、今度は「使い古した札をくれ」と突っ返される。偽札を警戒しているのだ。やけに慎重で面倒な運転手だ。「10元札しかない」と言うと「それでいい」と運転手。私は「4元得した」と喜んで車を降りた。
ところが翌日、レストランで勘定した際、札の選別機で調べた100元札を突っ返された。別の札を出してもやはりダメ。財布をよく調べると妙にきれいで、手触りの異なる100元札が4枚交じっていた。
思い当たるのは、出張先のホテルで返してもらった保証金の残金ぐらいだ。商売でもしていない限り、銀行以外で100元札を受け取る機会はめったにない。お金をもらうことに慣れず、油断が生じる。
世界第2の経済大国となり、物価も上昇一方の中国だが、紙幣の最高額はいまだに100元(約1200円)。500元札や1000元札の必要性はたびたび話題になるが、実現しない。最大の理由は偽札だ。
4元得したと思っていたら、実はその100倍損していた。あの運転手の慎重さを見習わないと。そして、高額紙幣を発行しないこの国の政策の正しさも確信した。 (渡部圭)