2012年09月27日
初めて訪れた湖北省武漢の街は、5年前の北京のように経済成長の真っただ中にあった。市内はマンションやビルの建設ラッシュはもとより、年内の開通に向けて地下鉄工事が急ピッチで進み、郊外では大規模な造成工事が行われていた。
オリンピック開催に向けてまい進していた当時の北京と同じように、長江(揚子江)中流にあるこの街も、まさに変貌しつつある。
その武漢の今を象徴する名所が昨年9月にオープンしたショッピング街「楚河漢街」だ。全長約1.5キロにわたる歩行者天国で、世界的な有名ブランドをはじめとした200以上の店が並ぶ。
店舗は20世紀初頭をイメージした中国風や洋風建築のほか、ところどころ奇抜な外観にガラス張りの建物がアクセントのように並び、見て歩くだけでも楽しめる。これだけおしゃれな街並みが中国内陸部にあるとは思わないだろう。
この歩行者天国に向かう時に乗ったタクシーの運転手は、見たところ20歳そこそこの男性。途中まで屈託ない笑顔で雑談していたが、到着間際「ここにはまだ遊びに来たことはないなあ」とぽつり。仕事が大変で遊ぶ余裕がないという。
彼にとって「近くて遠い」歩行者天国で買い物を楽しめる時は来るのだろうか。寂しげな横顔が心に残った。 (新貝憲弘)