2012年11月22日
この夏、ヒンズー教徒が多数を占めるネパール、インドを別々の仕事で訪れた。ネパールの首都カトマンズで、数頭の野良犬ならぬ野良牛が街中を悠然と闊歩(かっぽ)しているのを目にしたときは「何で牛が・・・」とすぐには理解できなかった。
牛を神聖な動物と崇(あが)める国だからで、インドも同じ。農耕や採乳に使っても決して食べない。名前が国名と同じ男性ガイドのネパールさんは「もし車で牛をはねて死なせてしまうと、人のときと同じように罰を受ける」と、住宅街でのんびり草を食べている牛に注意しながら運転していた。
ネパール人は鳥やヤギ、ヒツジなどの肉もあまり食べないそうだが、ふとネパールさんが「水牛のギョーザを食べに行こう」と言い出した。崇拝するのは白っぽいコブウシで、黒くて大きな水牛は食べてもいいとは、同じ牛でもずいぶん扱いが違うものだと思った。
小さな水牛ギョーザ専門店は客でいっぱいだった。1皿10個入りで60ルピー(約100円)。小さなまんじゅうのようで、スープをかけて食べる。水牛の肉は本来固いそうだが、タマネギやニンニクが混ざった具は柔らかく、カレー風味と牛の食感が口の中に広がった。
滞在中はあきらめていた牛を食することができ、水牛に手を合わせたい気分になった。 (杉谷剛)