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ワシントン 圧倒るつぼの愛国心

2012年11月27日

 同じ国の政党なのか疑いたくなるほど会場の雰囲気、いや「色」が違った。8月末から9月上旬にかけ共和、民主の順に、米南部フロリダ州タンパ、ノースカロライナ州シャーロットで開かれた党大会の印象だ。

 共和党の会場は、ざっくり言えば白人が9割。参加者2人がテレビ局の黒人カメラマンに「動物にはこうやってえさをやる」とナッツを投げ付け、警察に退場させられる事件もあった。民主党の会場は白人はざっと半分。残りは多様な人種が集まっていた。

 国勢調査によると、全米の人種構成比は白人が63%、ヒスパニック(中南米系)17%、黒人が13%。両党の会場はこれに比べ、いびつな人種比だったことになる。有権者全体を体現するような中道の「国民政党」はなく、両極の二大政党が大統領選を争っている。

 だが、会場を沸かせる演説のツボはまったく同じだった。移民の子孫である政治家が貧困や人種差別を乗り越えて成功した半生を語ると、肌の色に関係なく拍手が起き、涙ぐむ人も珍しくなかった。

 誰もが夢を実現するチャンスがある(はずの)米国は特別だという自負。それがこの国を一つにしている。一片の陰りもない愛国心を見せつけられ、小声で「君が代」を歌う癖が身に付いてしまった日本人にはまぶしすぎた。 (竹内洋一)