2012年12月05日
ヒューンと白い弧を描き、治安当局の放った催涙弾が、次々降ってくる。これに投石で抵抗していた数百人の多くは、イスラム主義者でなく、少し元気のよすぎる普通の少年や、若者たちだった。
米国で制作された、イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したとされる映像作品をめぐり、抗議デモが起きたエジプトのカイロ。「米大使館へのデモ隊と治安当局の衝突」が発生したと伝えられたが、違和感を覚えた。
現場の学生(20)は「映像はきっと、米政府が裏で操っている」といきがった。だが、よく聞くと映像をほとんど見ていないという。
どうも米大使館の手前にいる治安当局の取り締まりへの恨みや、新政権への不満が、参加した動機の大きな部分を占めるようだ。
少年(16)も「治安当局のひどいやり方に抗議している」。別の若者(17)は「中には混乱を起こすのが目的で、チンピラやカネをもらって参加した連中がいる」と声を潜めた。
イスラム政党関係者は「われわれは衝突に加わっていない。むしろ、現場で若者たちと当局の仲裁を試みたのですが・・・」という。
大半のイスラム教徒は、問題の映像に憤りつつ、過激な抗議活動には反対している。「イスラム教徒は危険」-。こんな誤ったイメージが、騒動で広がらないよう、願うばかりだ。(今村実)