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ベルリン 消えゆく分断の象徴

2013年01月05日

 ウィーンからの出張帰り。飛行機は闇に沈むベルリン・テーゲル空港に向けて着陸体勢に入っていた。

 団子を1つ串刺しにしたようなデザインのテレビ塔が、左手の窓をよぎる。旧東ベルリンの象徴だった塔を目にしたせいだろうか。眼下の黒い街並みに、今はないベルリンの壁が存在するかのような錯覚にとらわれた。

 東西に分割されたベルリンのうち、旧西ベルリンの面積は480平方キロ。東京23区よりひと回り小さく、名古屋市よりひと回り大きい。高さ4メートルの壁だけではなく、旧東ドイツ体制の敵対心にも囲まれた「陸の孤島」だった。

 そんな旧西ベルリンにとってテーゲル、テンペルホフの両空港はまさに命綱。1948年から1年弱にわたり旧ソ連が陸上交通を遮断した「ベルリン封鎖」の際には、米軍などが両空港に食糧をピストン空輸し、市民の命をつないだ。

 旧西ベルリンの住民には思い入れのある両空港だが、テンペルホフはすでに4年前に閉鎖。テーゲルも、旧東ベルリンのシェーネフェルト空港を拡張整備するブランデンブルク国際空港のオープンに伴い、来秋には役目を終える。

 89年11月9日のベルリンの壁崩壊から来年でほぼ4半世紀。分断都市の名残がまた1つ消えようとしている。 (宮本隆彦)