2013年01月13日
先日北京で開かれた中国共産党大会では、閣僚や国有企業代表らが連日、会見した。貴重な機会だけに記者たちはこぞって手を挙げるが、実際に質問できるのはごく一部だ。
そんな中、オーストラリアの女性記者が注目を集めた。何度も指名され、最初に中国語で質問した後に自ら英語に翻訳するという芸当まで演じ、会場を和ませた。中国メディアは彼女を大々的に取り上げたが、質問自体は正直ありきたりで、なぜここまで注目されるのか不思議だった。
その謎はすぐに解けた。欧米メディアによると、彼女が所属する報道機関は中国メディアと協力関係にあり、質問内容も中国人同僚が事前に作っていたのだという。
中国では政府が伝えたい公式見解を示すため、国営新華社通信など官製メディアに質問させる「やらせ」がよくあるが、外国人記者まで動員するとは知らなかった。
一方で都合が悪い質問は「無かったことにする」こともある。中国外務省幹部が日中関係のテーマで一部メディアだけを集め会見を開いた。後の定例会見で「なぜ他のメディアに連絡しなかったのか」と尋ねると「日本は(尖閣諸島の国有化を)反省して誤りを正すべきだ」とかみ合わない回答。その夜に公表された会見記録では、この質疑は削除されていた。 (新貝憲弘)