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ソウル 外交官コシある転身

2013年01月10日

 当地では、うどんは日本語の発音通り「うどん」と呼ばれる。うどん店はソウル市内あちこちにあり、市民は昼食に、小腹がすいた時の間食にと、気軽に楽しんでいる。

 こうした「韓国うどん界」で、ちょっとした話題になっているのが、今年九月にオープンした地下鉄・江南駅近くの「きり山」。主人の申尚穆(シンサンモク)さん(42)が、外交通商省の元課長なのだ。

 申さんは一九九六年に外通省入り。二〇〇〇年から二年間東京で研修し、〇六~〇八年に一等書記官として日本の韓国大使館に勤務した、日本通の外交官だった。

 日本滞在中に食べた東京・多摩地方のあるうどん店の味に魅せられ、韓国での開業を決意したという。申さんは「うどんは韓国、日本双方で大衆的な食べ物。うどんを通じて韓日間の交流・発展に役立てればうれしい」と抱負を語る。

 韓国では飲食店の「社会的地位」は高くないといわれてきた。体を動かす仕事よりも事務職が好まれ、たとえ味自慢の店でも、親は子どもが店を継ぐより「良い会社」への就職や、公務員になることを望んでいると聞かされてきた。

 ところが目の前の申さんは外交官から飲食業に転じ、エプロン姿で楽しそうに働いている。韓国の価値観は多様化しているようだ。

 (篠ケ瀬祐司)