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寧徳 似て非なる高速鉄道

2013年01月16日

 昨年の大事故で日本でも一躍有名になった中国の高速鉄道。安全性が疑問視されたが、実は使い勝手は意外にいい。地方路線が充実し、本数も多く、切符もだいたい当日買える。バスや車より移動時間を短縮できるので、出張には便利だ。

 福建省の省都・福州から100キロ北の寧徳までは、海沿いを走って30分ほど。料金は二等席で28元(約400円)と安く、乗り心地も悪くない。

 街の中心から離れた寧徳駅は閑散とし、外観は日本の新幹線の地方駅と似ている。福建省は習近平総書記が長年勤務し寧徳でもトップを務めた。路線選定に政治的な背景がありそうなところも新幹線をほうふつとさせる。

 だが、駅は似て非なる構造。エスカレーターもエレベーターもなく、ホームに出るには長い階段を上るしかない。重い荷物を持った年配客は息を切らしていた。売店も安全柵も車両の停止位置を示す表示もない。しかも長いホームに駅員は若い女性が1人だけ。

 次の目的地のアモイに向かうため再び乗車。車両のデザインや内装はやはり新幹線にそっくりだったが、違ったのは雰囲気。日本では子どもの泣き声に閉口することがあるが、中国では大人が大声で携帯電話を使い、酒を飲みトランプで遊んで大騒ぎ。つまり、車内で居眠りすることは難しい。 (渡部圭)