2013年01月28日

　自宅に程近いロンドン市内の英ＢＢＣ放送テレビジョン・センター。１９６０年に完成した建物は、一部制作部門などの移転に伴い、「世界最大のニュース発信地」の看板を下ろす。先日、息子を連れて最後の一般見学ツアーに参加した。

　ニュース番組の模擬体験などが続くツアーのさなか、ガイドが胸を張って案内したのは、何の変哲もない玄関だった。「キャメロン首相やベッカムらセレブもここを通りました」。これまで多分野の大物が番組に出演。時代の花形の往来を見届けた格式高き楽屋口というわけだ。

　ガイドによると、ＢＢＣには出演者から事前に細かな要望が届く。特に個性的な芸能界のゲストは、楽屋に入る前の「待合室」にもこだわりが。歌手のポール・マッカートニーの注文は、いつも「果物の盛り合わせ」。同じくレディー・ガガは「冷蔵庫がほしい」。理由は「かつらを冷やすため」だったとか。

　女優のジェニファー・ロペスは「内装を全部やり直して白に」。さらに「付き人用に、同じ部屋があと７つ必要」と言いたい放題。

　これにはＢＢＣ側も「わがまま」と憤慨したという。すべての要望に応じた後、多額の改修費用をロペスに請求。ガイドは「彼女は自分で全額を支払いました」と、勝ち誇ったような笑みで説明した。　（小杉敏之）