2013年02月12日
「みんな優しくしてくれて。長野で素晴らしい経験をしました・・・」。最後は涙で言葉にならなかった。仕事や食べ物、人との触れ合いを語るうちに、当時の場面を思い出したのだろう。
長野県庁で就業体験をした北京聯合大の女子学生が、昨年末、同大を訪れた県知事にあいさつした時のひとこまだ。思わず目頭を熱くした学長は「学生がこんなに感動する交流を、途絶えさせてはいけない」と語った。
政治的思惑が詰まった尖閣諸島問題で日中がいがみあい、民間交流まで停滞している。国交正常化40周年の昨年行う予定だった約600の活動も、年後半は尖閣国有化に反発する中国側によって次々と取り消された。
これほど濃密に民間が交流する2国は世界的にもまれという。戦争をした隣国民の気持ちを改善するための知恵だ。何があっても若者の交流は続けるべきだという声は根強い。
やはり年末に北京であった中国人学生の日本語作文コンクールで、ある男子学生はこう書いた。「何か事件があると反感と憎悪感を燃え上がらせるのに、普段の日本、中国、良いニュースに無関心な両国民。もっと善意と笑顔が広がるよう、自分たちの中の無関心ウイルスをなくそう」
いやなニュースばかりで、気がめいっていた私に希望をくれた言葉だった。 (渡部圭)