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ストックホルム 変わらぬ喜びの底流

2013年02月08日

 ノーベル賞と五輪の金メダリスト。この2つに共通するのは、世界の中でも、日本と中国の国民の関心が際だって高いことだ。

 日中とも受賞しなかった2011年、ストックホルムでのノーベル賞授賞式説明会に集まったマスコミは約20人。それが12年は約70人だった。実際はもっと違うだろう。

 ロンドン五輪でも、プレスセンターに記者室のあるマスコミは英国を除けば日本が断トツ。次に中国だった。メダルやノーベル賞が素晴らしいのはもちろんだが、こうも感じた。「欧米に勝てることを証明してくれた」。国民の喜びの底流には明治以降、日本人が目指す「欧米に追いつき、追い越せ」の思いがあるのではないかと。

 同賞受賞者らが宿泊し、ごった返すストックホルムのホテル。そのロビーで、受賞者関係者の中国人男性が金髪の白人女性にサインを求めた。ただの市民なのにである。

 それは、1970年の大阪万博のころの日本を思い起こさせた。当時を振り返る連載を担当したことがあるが、その中にこんなくだりがある。

 「サイン、サイン!」。金髪、白人の外国人観光客を見つけては、書いてとせがんだ。

 日本人で今、サインを求める人はいないだろう。だが、本質はそれほど変わっていないのではないか。そう感じた。 (有賀信彦)