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ラリネア 悩ましく愛すべき国

2013年02月19日

 スペインは鬼門だとつくづく思う。南部の港街ラリネアで、人づてに面会をお願いしていた漁師との連絡が突然途絶えた。

 ひと月前、マドリードでは若者に取材の約束をすっぽかされている。面会を申し込んだ学者に二度三度と「明日また訪ねて」と言われ結局返事は「無理」だったことも。巡り合わせか、相性の問題か。

 スペイン内戦に英国から義勇兵として参加した作家ジョージ・オーウェルはルポルタージュ「カタロニア賛歌」で、スペイン人の「能率の悪さ」に「外国人という外国人があきれかえる」と書いた。命がかかった軍隊での出来事だけに本質的な問題にも思える。

 ただ、現場でじたばたすればなんとかなるのもこの国。漁協を直接訪ね、20年以上前に学んだスペイン語で必死に訴えたら、その夜、会いたい人が全員目の前にいた。しかも歓迎ムードだ。いやな質問にも誠実に答えてくれる。

 オーウェルはこうも書いている。「外国で暮らすのなら(中略)まずスペインを選ぶ」、「友だちをつくるのが、ほんとうに楽なのだ!」。

 漁師の1人が採れたての二枚貝を割って「食え」と言う。味付けなし。海の塩味だけのむき身の新鮮さに驚きつつ、オーウェルに心から賛同した。(野村悦芳)