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北川県 復興景気の裏側は・・・

2013年03月04日

 「ぜひ見ていってくれ」。4年ぶりに再会した四川省に住む友人が、2008年の四川大地震で甚大な被害を受けた北川県の見学を勧めた。震災当時にも現地までは行ったが、壊滅状態となった県中心部は立ち入り禁止だったため、丘の上から眺めるだけだった。その後ほぼ当時のまま保存され、観光客が見学できるようになったとは聞いていた。

 被災地を「観光地」として扱うイメージがあり、被災者の心情をおもんぱかると素直に見に行く気にはなれなかったが、実際に行ってきて考えは変わった。傾いた看板やつぶれた建物を間近で見ると、当時のすさまじい被害の状況があらためて思い起こされ胸が熱くなった。震災の様子を伝える資料は大量にあるがやはり「百聞は一見に如(し)かず」だ。

 一方、北川県から車で30分ほどの綿陽市内は、時折渋滞するほど車の量は増えた。にぎわいもすっかり取り戻し、街並みを歩いていると大震災があったとは思えないほどだ。

 ただ友人は「車が増えたのは、震災の時に車があると便利だと分かったから。またお金をため込むよりも、使えるときに使おうと考える人が増えた」と説明してくれた。復興景気の恩恵を受けて楽しむ人々の笑顔にも、見えない変化をもたらした大震災の影響があることを思い知らされた。 (新貝憲弘)