2013年03月07日
3回転ジャンプが決まったのを見ながら、「歴史的瞬間に立ち会えたかもしれない」と思った。昨年11月のフィギュアスケート、GPシリーズ・フランス大会。男子で無良崇人選手が逆転による初優勝を決めた。来年の冬季五輪ソチ大会に向けハイレベルの戦いをする日本の男子に、新たな有力選手が名乗りを上げた瞬間だった。
日本でも有名なスター、キャンデロロ選手の母国。フィギュア男子の人気は高い。目の肥えた会場のファンが無良選手に絶賛の拍手を送っている。日本人記者として取材意欲も高まる一方だ。
しかし取材ゾーンで問題が起きた。なぜか目の前には無良選手と大ベテランとおぼしきフランス人専門記者の2人だけ。「フランス語は少ししかできない」と主張したのに流れで通訳を断れなくなった。ベテラン記者は無良選手の今季成績などを知っており、パリでの無良選手の大躍進に高い関心を示している。専門用語の訳をごまかしながら、しどろもどろの数分間。日本人としての義務感もあり頑張ったのだが、やはりぼろぼろだった。
ただベテラン記者は満足そうにお礼を言ってくれた。談話がどこで使われたかしらないが、当地の人の記憶に無良選手の印象が少しでも刻まれる手助けができたのでは。厚かましくも今はそう思っている。 (野村悦芳)