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モスクワ オアシス消えないで

2013年03月13日

 モスクワの地下鉄駅周辺の街角や主要公園の近くで、有料のトイレをよく見かける。日本の工事現場などに見られる移動可能な簡易ボックス型で、通常は数個が並べられている。そのうちの1つに料金徴収係のおばさんがおり、数10ルーブル(50~100円)を払って利用する場合が多い。

 近くのスーパーやファストフード店に駆け込んでトイレを使わせてもらうこともあるが、大概は座るのをためらうほど汚れていたり、溶けない紙が詰まって水があふれかけている。げんなりさせられるので、おばさんがまめに掃除している有料トイレは重宝だ。街行く人を眺め、周辺で起きた出来事もよく知っているので、おばさんと二言三言交わすのも、小さな楽しみの1つになっている。

 しかし、そんな「モスクワ名物?」が、今年9月ごろには消えそうだ。市内計1200カ所に公衆トイレの小屋がつくられる。市当局がこのほど入札を行い、民間企業2社が道路脇など600カ所ずつを、10年間借り受ける契約が成立した。

 建設費は1カ所当たり600万円ほど。暖房施設があり、手洗い用のお湯も出る。企業側は広告費や1回約60円の利用料で利益を確保する。ただ、徴収方法は未定で自動収受機設置も検討中という。できれば、おばさんのままがいいと思っている。 (原誠司)