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サンフランシスコ おしどり夫婦永遠に

2013年03月18日

 2月上旬、コネティカット州の夫婦が結婚80年ということで米団体から表彰される話題がニュースになった。それより10年短いが、結婚70年という夫婦がわが家の近くにもいた。夫のウォレンと妻のジーニだ。

 2人は高校生同士で結婚して以来連れ添ってきたが、残念なことに、ジーニは2月に入ってすぐ心臓が弱まり亡くなってしまった。

 70年の結婚記念日は昨年12月だったが、何か行事を計画している様子もなかったので、お祝いのお茶飲み会を開いてあげた。2人のほかに近所の夫婦2組を自宅に呼んだ。ジーニはペースメーカーを入れており、医師に「記念日までは自分を生かして」と頼んでいたくらいに弱っていたので、お祝いの会が実現するかどうか気が気ではなかった。

 当日、玄関の階段を上りきったジーニは笑顔だった。お茶の前にシャンパンで乾杯した。飲み物をお茶に切り替えようとしたが、ジーニはもっとシャンパンが欲しいと言う。「大丈夫か」と本人に念を押したが、本人は「大丈夫」。したいようにさせてあげればいいと思い、シャンパンをなみなみと注いだ。

 それから、ふた月もたたないある日、ウォレンが1人でやって来た。「ジーニが死んだ」と。世間はバレンタイン商戦でにぎやかなころ。彼は泣き声だった。 (岡田幹夫)