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パリ イソップも驚く手口 

2013年03月26日

 観光客でごった返す凱旋(がいせん)門に面した道路。足元の2~3メートル先を金の指輪が転がっているのを見て、今流行の詐欺だとピンと来た。ひと月ほど前の地元紙に手口が載っていたからだ。

 詐欺の方法はたしかこうだ。道に安物の金の指輪を転がす。拾ったところで近くの通行人に「これはあなたのものか」と尋ねる。そうだと答えれば、指輪をあげて謝礼をねだる。違うと答えれば「われわれはラッキーだ。2人で山分けしよう。指輪をあげるから、私にいくらかくれないか」と要求する。記事は、そんな不届きなやからがパリに出没していると伝え、注意を呼び掛けていた。

 見れば、確かに詐欺師とおぼしき初老の小柄な男が指輪を追っている。転がした場所が悪かったと見えて、通行人は誰も反応しない。拾い上げて、もう一度転がした。

 この手口、面白いのはイソップ童話の1つに似ていること。「あなたが落としたのは金のおのか」というあれだ。欲を出してうそをつけば損をする。

 男の2投目も不発に終わったようだ。本当に引っ掛かる人がいるのか気になって、じっと見ていたら男と目が合った。どうやら警戒されたようで、男は指輪を拾ってどこかに去っていく。パリは観光客だけでなく変な手口の犯罪も集めるようだ。 (野村悦芳)