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上海 なお健在ウラ風物詩

2013年03月28日

 中国の春節(旧正月)といえば、大量の出稼ぎ労働者たちが帰郷する「大移動」や、春節を迎えた瞬間に街中で鳴らされる爆竹が風物詩。今年は2月10日だったが、1週間の春節休暇中はお祝いムードに包まれた。その陰で、貿易業者やビル管理者たちは例年、“ウラ風物詩”に悩まされる。

 輸出入の手続きをする税関は、業務がストップする春節休暇の前後に激しく混み合う。通関をスムーズに済ませたい貿易業者の足元を見るようにして、手続きや検査の担当者たちが袖の下を要求するのだという。

 ある日系貿易業者は「特急料金などの名目で、数千元(1元=約15円)が相場。日ごろから暗に要求があるが、春節前は特に多い」と打ち明ける。

 ビル管理者には、春節前に消防検査が待ち受ける。建物が安全基準を満たしているかどうかの検査だが、こちらも「足代」など数千元を渡して合格をもらうのが通例とか。

 検査が春節前に集中するのは、担当の役人たちが休暇中の小遣いを稼ぎたいためだといわれる。休暇中は何かと物入りのようで、直前には窃盗犯が急増し、注意が呼び掛けられる。

 中国では役人の収賄を排除する「反腐敗」が声高に叫ばれているが、ウラ風物詩は今年も健在だったようだ。

 (今村太郎)