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新竹 駅で連結100年の絆

2013年04月05日

 日本が統治していた時代に竣工(しゅんこう)した台湾北部の新竹駅の駅舎が今年、100周年を迎えた。設計者は孝明天皇の落とし子といわれる松ケ崎萬長(つむなが)。その孫で旧松前藩主家当主の松前孝廣さん(82)とひ孫になる石野とみ子さん(66)が新竹駅を訪れた。

 松ケ崎は10代の明治初期、岩倉具視の使節団に加わり、ドイツに渡り建築を学んだ。帰国後は東京駅の設計などで知られる辰野金吾らとともに日本建築学会の前身である日本造家学会を立ち上げた。

 明治40(1907)年に志願して台湾総督府勤務となり、すでに取り壊された基隆駅など多くの作品を残した。新竹駅はその1つでもっとも完全な形で残っている。ドイツゴシック風で、屋根中央に時計台をしつらえ、どっしりとした風格ある建物。100年の歳月に耐え、今も現役の駅舎だ。

 「乗降客は1日平均3万人」という黄栄華駅長の説明を聞いて松前さんは「100年も大事に使ってもらい、ありがたいことです」。許明財・新竹市長からは新竹駅の精巧な模型をプレゼントされた。その市長は「新竹駅が竣工した3月31日に100周年の記念式典をします」。続けて「その式典に来年100周年を迎える東京駅の駅長を招いて、姉妹駅の提携をしたい」と新たな「日台の絆」作りに意欲を見せた。

 (迫田勝敏)