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レイキャビク 男女平等理想の形は

2013年04月11日

 「まだ時代は女性の芸術家を求めていなかった」。アイスランド著作権協会会長、ヤコブさん(59)はレイキャビクの自宅で、15歳の時、失意のうちに亡くなった母親の人生を振り返った。

 今や男女平等世界一のアイスランドだが女性が家庭から社会に出始めた1970年代、ピアニストの母親の活動は「早すぎた」。評価を受けず、うつうつとする中、酒量が増え、アルコール依存症となり離婚。しばらくして亡くなった。

 そんな事情もありヤコブさんは祖父母に引き取られて、少年時代を過ごした。「おばあちゃんは、おじいちゃんの出張が急に決まれば、さっとスーツケースの荷造りをする。まさに家族のために働く伝統的な妻だった」。家庭の温かさを初めて知った「古き良き思い出」だという。

 連れ添いは銀行で管理職を務めるキャリアウーマン。典型的な共働き夫婦で、アイスランドの現状を肯定しているかに見える。だが「子どもが学校から帰ってきても、誰もいないのがこの国の現状。親のどちらかが家にいてあげられるのが理想的なんだけど…」。

 女性の進出ばかりが目立つこの国で、男性はどんな思いでいるのか。やっと本音を聞いた気がしたが、それでも「親のどちらか」と表現するところに男女平等の浸透ぶりを感じた。 (有賀信彦)