2013年04月18日
通勤でワシントンのオフィス街を抜ける大通りを歩く。すると、歩道の片隅に無残に転がる「自転車だったもの」がいくつもあることに気が付いた。ハンドルやタイヤが取り外されて、もはや単なる工作物だ。
その自転車の持ち主は盗まれないようにとチェーンで厳重に鉄製の柵にくくりつけていたが、それ以外の部分を全部持っていかれていた。地元の人によると、「そういうパーツを買い取る店があるんです」という。
主要道には自転車専用レーンが整備され、サイクリングにはやさしい街。だが、日本の市街地のように膨大な放置自転車を見かけないのは、車社会ということもあろうが、盗まれるリスクの高さも一因だろう。
一方、よく見かけるのが2008年に始まった「キャピタルバイクシェア」と呼ばれる共有レンタル自転車だ。利用者は急増しており、現在、市街に175カ所ある専用の駐輪場で、1700台を運用するまでに拡大している。潜在的な自転車利用のニーズに応えたのだろう。
日本では放置自転車対策の一環で、自転車シェアが各都市で始まっているが、まだまだこれから。ワシントンでシェアがはやる最大の理由が「盗難」という後ろ向きな背景であるならば、なかなか悩ましい問題だと感じた。 (斉場保伸)