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モスクワ 日中外交「華」が必要

2013年04月23日

 「国民的歌手」はやはり華があった。

 中国の習近平国家主席の初外遊を追い掛けて、モスクワに出張した。習主席が講演する大学に取材に行くと、「オー」という聴衆のどよめきとともに、中国の陶磁器の模様をあしらったような、ひときわ目立つ衣装を着た女性が姿を現した。習氏に同行した「第一夫人」(ファーストレディー)の彭麗媛夫人だった。

 彭夫人は人民解放軍の少将で「軍営の歌姫」と呼ばれ、中国では、習主席以上に外遊中の振る舞いが注目されていた。メディアで繰り返し伝えられると、身に着けていた衣服を制作した中国ブランドは爆発的な人気を獲得し、アパレル関連の株価まで上昇。歴代の第一夫人の地味なイメージを覆す彭夫人の登場は、確実に中国人の自尊心をくすぐっている。

 一方、わが国の首相夫人も、ラジオDJを務めたり飲食店をオープンしたりと、従来の型にとらわれないという点では負けていない。3月には、在日中国大使館で開かれたパーティーに出席し、大使夫人らと交流している。沖縄県・尖閣諸島をめぐる対立から、日中首脳会談の実現は望むべくもない現状だけに、華のある夫人たちの「ファーストレディー会談」を先に実現してみては、と勝手に想像してみるのだが。 

 (佐藤大)