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西安 草の根こそが解決策

2013年04月24日

 西安の大学で中国人学生たちと親しくなった。誰も日本語を話せず、日本人と話すのも初めて。日本語のあいさつなどを興味深げに聞いてくる。そのうちの一人が「メシメシは食事をするという意味ですね」と言った。

 「メシメシ」は抗日戦争ドラマに登場する悪役日本兵の決まり文句。「飯を食え」「飯を食いたい」など食事に関するせりふがなぜかこの一言で表現される。ドラマの影響で、中国人なら誰でも知っている。

 島をめぐる対立が表面化しテレビやネット、新聞は一貫して日本の脅威を強調。反日ムードは消えない。学生には「抗日ドラマなんか見るな。中国と戦争したがっている日本人はいない」と諭した。

 一方で、中国人の日本に対する興味は増すばかりだ。反日デモが起きても個人で訪日しスキーや温泉を楽しむ富裕層は減らない。誰もが日本の桜にあこがれ、食品や化粧品、自動車など日本製品に対する信頼は依然高い。反日ムードに国内や他国のライバル企業の影があるとみるのは的外れではないだろう。

 私と話した学生の一人は「日本人のイメージが変わった」と言ってくれた。若い世代は柔軟で好奇心も旺盛だが、振り子のように容易に左右に揺れる。彼らをいかにして“日本ファン”にするかが、今後の両国関係を左右する。(渡部圭)