2013年05月16日
GM、フォード、クライスラー。米国の3大自動車メーカーがしのぎを削りながら、自動車の歴史を刻んできた都市、デトロイトの中心市街地に足を踏み入れた。
GM本社ビルの超高層タワーは午後の太陽を浴びて、まばゆく輝く。だが、その足元は街のど真ん中にもかかわらず、シャッターの閉まった古いれんが造りの雑居ビルと駐車場がどこまでも広がっていた。歩く人の姿もまばら。あまりの寂しさに途方に暮れた。その気温以上に北風が冷たく感じられた。
2008年のリーマン・ショックでどん底まで落ちた自動車販売だが、昨年来、オバマ政権のてこ入れも功を奏し、国内の各種販売データは勢いづいている。米国の自動車産業は、急速に回復しているのではなかったか。
地元の人に聞くと、「今は駐車場に少しだけど車が止まっているでしょう。前は1台もなかった。人も歩いている。これは劇的な回復なんですよ」。しかし、経済の立ち上がりが弱々しいことは、言うまでもない。
「デトロイトに仕事を回して」。ふと見上げると、高層ビル上層のほぼ10階分をつぶすように掲げた巨大なポスターが目についた。ここに拠点を抱える情報技術(IT)企業が掲げたらしい。街の叫び声を聞いたような気分になった。 (斉場保伸)