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カラカス 「反米国家」の実態は

2013年06月12日

 南米ベネズエラにはときに「反米国家」という冠が付く。だが、首都カラカスに住むウィルマーさん(48)は「確かにチャベスは反米を叫んでいたけど、本当は米国に感謝していたはずだ」と笑う。

 ウィルマーさんは熱心な野球ファンだ。反米の旗手といわれた故チャベス大統領も同じ。少年時代の夢は野球選手。彼の遺体を安置してある軍事博物館には、野球をしているチャベス氏の写真が何枚も飾られ、ピッチャー姿や見事にスライディングを決めたシーンなどがある。

 野球を浸透させ、南米では珍しい野球大国をつくり上げたのは米国。だから「感謝したはず」という論理だ。ウィルマーさんは反チャベス派だが、元野球少年として「米国への感謝」では完全に一致できると主張する。

 反米といっても、ベネズエラは石油の半分を米国に売っている。キューバへの安価な石油供与ばかりが注目されるが、米国向けに輸出される量からみれば微々たるものだ。

 カラカス近郊にある南米最大の貧民街の1つ、ペタレ地区で貧しい男性が「米国に行きたい」と話していた。「でもベネズエラは反米でしょ」と聞くと、言い返された。「そうなの?どうして?誰だってアメリカに行きたいに決まっているじゃないか」 (吉枝道生)