2013年06月19日
英国人は飲むときに、つまみを注文しない。仕事帰りに立ち寄るパブでは、ラガーやエールをちびちびやりながら、おしゃべりに興じるのがこちらのスタイルだ。
酒のさかながそもそもない。せいぜいポテトの揚げ物。「だって、酔っぱらうために飲んでいるんだから」と、答えは至極明瞭だ。
日本人のことを、英国人は「foodie(フーディー)」だと言う。食べ物に目がない人のことだ。つまみに限らず、おいしい料理を求めてやまない姿は不思議に映るようだし、ましてレストランで撮った料理の写真をブログに載せ、あれこれ評するなんて埒外(らちがい)。「フードはあくまでフード。おなかを満たすもの」とのたまう。
確かに食事の後に「おいしかったぁ」とは言わずに、こちらの人は「満腹」と身もふたもない言い方をする。この違いはどこから来るのだろうか。
近年、ロンドンの食べ物はおいしくなったといわれる。評判のレストランは繁盛しているし、料理のエンターテインメント番組も人気だ。セレブシェフもいるし、タウン誌は「ロンドンのレストラン ベスト50」の特集をしている。十分にフーディーに思えるのだが、答えは違った。
「日本人のようにエキサイト(興奮)はしないんです、食べ物には」 (石川保典)