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香港 自由の花は開くのか

2013年07月09日

 ひと駅ごとに黒いTシャツの若者たちが乗り込んできて、みるみるすし詰め状態になった。中国で民主化運動が武力弾圧された天安門事件から24年となった6月4日。追悼集会が開かれる香港中心部の公園へと向かう地下鉄の車内は、開始3時間前というのに、熱気に満ちていた。

 予報は雷を伴う大雨。だが、会場はみるみる黒く染まった。開始直後、予報通りの空模様となり、民主団体が数日かけて設置した音響装置や大型スクリーンは、機器が水没して使用不能となった。当時の映像を見て、事件の風化防止を叫ぶ予定だった。

 近くに落雷もあった中、15万人(主催者発表)の参加者は追悼のろうそくを手に、香港で歌い継がれている民主化応援歌「自由花」を叫び続けた。「どんなに雨に打たれても、自由は必ず花開く」

 中国本土では、習近平指導部が自由や人権を意味する「普遍的価値」を、大学で使えない“禁句”とした。天安門事件を知らない若者も増えている。風化が進めば、事件を蒸し返されたくない中国共産党の思うつぼだ。

 あいにくの荒天に、追悼集会は予定を大幅に短縮して1時間弱で閉会した。だが、参加者の多くは夜中まで居残り、犠牲者の無念に涙を流しながら、ろうそくをともし続けた。 (今村太郎)