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クアラルンプール 若者に託す国の未来

2013年07月10日

 初の政権交代なるか、と注目された5月のマレーシアの総選挙。敗れた野党支持者の若者らが選挙無効を訴え、1カ月以上にわたって抗議行動を続けている。首都クアラルンプールで投票日の前日、「ソーシャルネットワークが政治を変える」と期待を口にしていた彼らを思い出す。

 「どんな情報でも入ってくるんだ」。30代の男性は声を弾ませた。5年前の前回選挙まで選挙情報は主に「官製メディア」で入手してきたようだが、フェイスブックやツイッターを通し、さまざまな角度からの選挙分析や、候補者のうわさ話まで入手できたことに驚いていた。

 10分間程度の取材中も、スマートフォン(多機能携帯電話)を頻繁にいじる姿を目の当たりにし、情報に飢えていたことが伝わってきた。ソーシャルネットワークが契機となった民主化運動「アラブの春」になぞらえ、「マレーシアの春」への期待が大きく膨らんだのもうなずけた。

 野党が敗れると、ツイッターの書き込み欄の多くは真っ黒に塗られた。二重投票などの不正が行われ、与党に有利に働いたことへの抗議だという。その真偽のほどは別として、政治を変えられると信じた若者の落胆の大きさが伝わってきた。と同時に、そんな若者のいる国の将来が楽しみになった。 (寺岡秀樹)