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ランカスター 文明の利器拒む試練

2013年07月12日

 見渡す限り牧場が広がっていた。草を食べるのは牛、馬。麦わら帽子をかぶり、黒いつりズボンをはいた男性が、畑で農作業をしていた。

 ニューヨークから車で約3時間。ペンシルベニア州ランカスターにあるアーミッシュ村を訪れた。

 キリスト教の一派で、ドイツ系移民の彼ら。今でも電気製品や自動車を使わず、質素な生活を続ける。

 移動は馬車。銀行や商店の駐車場にも馬車が止まっていた。

 アーミッシュのサムさんに、馬車で村を案内してもらった。約2万人のアーミッシュの人々が住む。民家の裏庭には、洗濯物が風ではためいていた。

 道端で自家製菓子を売る子どもたちがいた。1枚が手のひらほどもあるチョコチップクッキーが5枚2ドル(約200円)と良心的で、すがすがしい気分を味わった。

 1日の終わり、村から車で出ようとすると道路が大渋滞になっていた。交通事故のようで、パトカーや救急車が続々集まってきた。

 まさに、車が馬車に突っ込んだところだった。おろおろする車の運転手。その横で、馬車に乗っていたアーミッシュと馬が地面に投げ出され、救急隊員が駆け回っていた。

 文明の利器を拒んで、現代に生きる彼ら。「試練」という言葉が頭に浮かんだ。 (長田弘己)